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Q(呉勝浩)

Q(呉勝浩)

直木賞候補の常連である呉勝浩は、その作品の中で常に犯罪者や社会からはみ出した人々に対する、社会側からの排除や隔離、洗脳や同一化に対する疑問を投げかけている。

『Q』も、これまでの問題提起をより深く掘り下げた長編小説だ。物語の主人公は、清掃会社で働く町谷亜八(通称ハチ)。かつての傷害事件が原因で、今は執行猶予中の日々を過ごしている。そんなハチの元に、血縁のない姉である睦深(通称ロク)からの突然の連絡が入る。ロクから伝えられたのは、弟・侑九(通称キュウ)を脅す謎の人物の存在であった。

キュウは、ダンサーとして非凡な才能を持っていた。その踊る姿は観る者を圧倒し、目を奪う。彼は大きな舞台にデビューを飾り、注目を集め始めていた。その一方で、プロデューサーはコロナ禍で閉塞感を抱える人々を取り込むため、キュウを利用しようと画策。法を超えてまでも、彼をカリスマとして大々的に売り出す計画を立てていた。

物語の中で、「感動」とは思考を止め、自己を忘れ去ること、自己を消失させる願望そのものだと説明される。カリスマとは、それを叶える存在。肯定的であろうと否定的であろうと、集団の一員として己を消し去り大きな塊の一部として動くその狂気性は、人に快感をもたらすとも述べられている。

カリスマによる「感動」のインフレ。『Q』は、人の欲望と暴力が交差した果てを描いた物語だ。


書籍名:Q
著者名:呉勝浩
出版社:小学館

 

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