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読書のおともに

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漫才の西高東低の歴史『東京漫才全史』(神保喜利彦)

東京漫才の歴史と栄光、そして挫折を深堀りする本書は、関西勢に隠れがちな東京漫才界の豊かな伝統と、その興亡の物語を描いています。戦前の黄金期から、戦後の再興、漫才研究会設立まで、数々の困難を乗り越えた漫才人の情熱と組織内の葛藤が、読者の心を…

人間性、正義、社会性…深いテーマに切り込んだ警察小説『県警の守護神』(水村 舟)

警察小説の新境地を開く『県警の守護神』は、事件解決だけに留まらない深い人間ドラマと社会的テーマを描く。訟務係を中心に、警察内部の葛藤や正義の探究を繊細に捉えた物語が展開される。読後も考えさせられる作品であり、警察小説ファンならずとも魅了さ…

イスラム圏の架空の土地で繰り広げられる神話的難民文学『西への出口』(モーシン・ハミッド)

内戦に翻弄される若い男女の逞しい旅路を描いた「西への出口」。現実と虚構が交じり合う世界観と、個々の人間性が光る物語が展開される。彼らの顛末を神秘的に映し出す本作で、読者は移民の物語と精神的な軌跡に思いを馳せることになる。著者はモーシン・ハ…

ナウマンゾウの発見者としても知られる地質学者・エドムント・ナウマンの足跡をたどる一冊『地質学者ナウマン伝』(矢島道子)

幕末から明治にかけて日本へ来た地質学者エドムント・ナウマンの足跡をたどり、彼が遺した科学的・文化的遺産を解き明かす。ナウマンが作成した日本初の地質図の精度と彼の評判にまつわる誤解を、矢島道子の研究を通じて紹介している。

古事記と日本書紀の相違点から出雲神話を読み直す一冊『出雲神話論』(三浦佑之)

古事記と日本書紀の違いを掘り下げ、特に出雲神話と神魂神社に焦点を当てた『出雲神話論』。カムムスヒや出雲の神々に関する新説に加え、神社合祀の由来や出雲族の歴史についても考察。日本の神話と歴史への理解を深める一冊。

奇想天外なストーリーを存分に楽しめるモフモフ・ファンタジー『猫君』(畠中恵)

育ての親に「猫又」と告げられた猫みかんの運命とは。飼い主を取り殺したと疑われ、追われるみかんは先輩猫又によって吉原遊郭に匿われ、江戸城内に新米猫又の学び舎「猫宿」へ。江戸を舞台に英雄「猫君」の再来の噂も交え、数々の試練に挑む仲間たちとのフ…

絵巻をめぐる歴史の謎解きを楽しめる一冊『酒天童子絵巻の謎』(鈴木哲雄)

中世の説話「酒天童子」を題材にした「酒天童子絵巻」の謎にせまる書籍。絵巻の伝来や中世武士団の正統性示すための文化遺産としての価値など歴史的文脈を解き明かす。鈴木哲雄の研究により、新たな歴史の一面が浮き彫りに。

天下人の知略が詰まった「藩」の成立と、その役割を学べる一冊『藩とは何か』(藤田達生)

江戸時代の「藩」についての誤解を解き明かし、その成立過程と幕藩体制下での特色・役割を探る一冊を紹介。国替の実態や領地支配についても解析。歴史の教科書では語られない藩の真実に迫る。

DNA鑑定が明らかにする新しい歴史の側面を楽しむ一冊『王家の遺伝子』(石浦章一)

DNA鑑定の興味深い事例を紹介する「王家の遺伝子」。リチャード三世の正体や古代エジプトのファラオの秘密が明らかに。著者石浦章一が遺伝子の不思議を解き明かし、生命科学の最新知識も提供する、歴史と科学が交差する一冊。

記録の少ない平安時代前期、「源氏物語」の下地になる歴史的知識をさらっと学べる一冊『謎の平安前期』(榎村寛之)

奈良時代の詳細な歴史を伝える正倉院文書と異なり、平安時代前半には残された記録が少なく、服装の変化など多くの謎がある。『謎の平安前期』はこれらの疑問を探る一書で、三重県立斎宮歴史博物館の学芸員の知識と解釈が盛り込まれている。

スポーツを通して感じる超自然的な何か『神様は返事を書かない』(阿部珠樹)

スポーツの興奮を体現した阿部珠樹の『神様は返事を書かない』。丹念な取材と鮮やかな文体で様々なスポーツ界の名選手たちの栄光と苦悩が綴られている。テッド・ウィリアムスから大谷翔平まで、感動に満ちた600ページの傑作ノンフィクション。

豊富なカラー図版で「城」の歴史をたどる『描かれた中世城郭』(竹井英文・中澤克昭・新谷和之)

中世城郭の姿を描いた絵画史料を集めた『描かれた中世城郭』では、時代ごとの戦闘スタイルと城郭の構造の変化を追跡できる。馬が重要だった鎌倉時代の門や守護職を世襲した室町時代の居館など、貴重な資料がカラーで紹介されている。

「合成生物学」の今とこれからを見渡すための一冊『我々は生命を創れるのか』(藤田達生)

合成生物学の現状と課題に迫る『我々は生命を創れるのか』。細胞の模倣や人工細胞作りの可能性、遭遇する難問について考察。科学の限界と未来を探る。

世帯年収1000万円のリアルを数字を通して検証する一冊『世帯年収1000万円』(加藤梨里)

共働き夫婦による世帯年収1000万円の実情を抉る『世帯年収1000万円』。都心の住宅価格上昇や社会的負担増で、実は「パワーカップル」の生活は思ったほど余裕がない。教育費の公的支援の所得制限による影響も分析した加藤梨里の洞察に注目。

生命科学と進化の歴史を塗り替えるノンフィクション的フィクション『ドードー鳥と孤独鳥』(川端裕人)

川端裕人の『ドードー鳥と孤独鳥』は、絶滅した鳥たちへの探求心から生まれた文学作品である。新聞記者・望月環の眼を通じて描かれる絶滅生物への深い興味と、生ける宇宙への省察が読者を引き込む。倫理的問題と現代社会を反映したテーマも見逃せない。

ドロドロの政治的意図から切り離したワクワクな人類史を知れる一冊『万物の黎明』(デヴィッド・グレーバー/デヴィッド・ウェングロウ)

光文社から出版された『万物の黎明』は、人類史に対する新たな視点を提示する。農耕の誕生、文明の形成、権力の構築についての従来の理解を問い直し、古来からの自由と遊戯の精神を発見しようとする試みだ。人類がどのようにして愉快に生きられるかの実験の…

前田久吉、産経新聞と東京タワーをつくった大阪人(松尾理也)

大阪から出発し、産経新聞・東京タワーを築いた前田久吉の波乱万丈な一生。新聞経営や戦時下の新聞統合から文化事業に至るまで、その功績と知られざる足跡を追う一代記。大正から昭和の日本を彩った偉業を見つめる。

存在のすべてを(塩田武士)

塩田武士の『存在のすべてを』は、平成の謎多き二児誘拐事件を軸に、令和に至るまでの深い人間ドラマを紡ぐヒューマン・ミステリーです。新聞記者と画商の視点から家族の絆と痛みが描かれ、迷宮入り事件の真相に迫ります。

父がしたこと(青山文平)

江戸時代末期を舞台に、藩主の命を巡る葛藤と一族の絆を描く青山文平の時代小説『父がしたこと』。目付・永井重彰が従う父・元重の決断とその裏に隠された苦悩を、医療の実情を交えながら緻密に描き出している。永井家の運命が何を告げるのか、興味深い展開…

武器としての「中国思想」(大場一央)

中国古代思想が現代問題への鍵を握る『武器としての「中国思想」』を解説。孔子、老子に始まる古典が示す功利主義、個の確立、そして陽明学の可能性を明らかにし、伝統を現代に生かすヒントを探る。

文化外交の世界(桑名映子編)

19世紀から20世紀の国際関係における文化外交の役割を探る『文化外交の世界』の解説。異文化理解の力と、時代とともに変化する外交の様相が、歴史学者の洞察により鮮やかに描かれています。軍事や経済とは異なる、文化の力が国際舞台で果たした役割とその変…

小麦の地政学(セバスティアン・アビス)

世界の小麦市場を寡占する国々の戦略と影響を分析した『小麦の地政学』。特にロシアが果たす役割と食料安全保障の現状について詳細に迫る。ウクライナ紛争が国際社会の小麦に対する姿勢にもたらした変化とは。

神と黒蟹県(絲山秋子)

架空の地、黒蟹県を舞台にした絲山秋子の小説集『神と黒蟹県』の魅力を紹介する。人と地域、神とのふれあいを描いた物語からは、人間関係の奥深さと土地の個性が垣間見える。神の視点を通じて、ごく普通の地方の新たな魅力を発見できる作品だ。

人間の彼方(ユーリ・ツェー)

新型コロナ下のドイツを舞台に、コピーライターのドーラが田舎へ移り住む『人間の彼方』。旧東ドイツの村で衝突と理解を深める彼女の奮闘を描く。人間関係、偏見、共生の問題に正面から取り組む物語。

世界の移民歴史図鑑(フィリップ・パーカー)

ホモ・サピエンスがアフリカを出た初期から現代に至るまでの人類の移動・移民の歴史に迫る『世界の移民歴史図鑑』を紹介。気候変動や社会状況が引き起こす人々の苦難と勇気の物語を視覚的に捉えることができる。現在の移民問題にも一石を投じる内容となって…

清代北京の首都社会(堀地明)

清朝北京の日常と危機管理を描く『清代北京の首都社会』を解析。食糧確保から消防、治安維持まで、首都の仕組みに迫る。帝国の中心で生活する人々の挑戦と対応が、行政文書と実例を通じて明らかに。各種図版も豊富に収められ、歴史的背景と共に北京の息吹を…

バロック美術(宮下規久朗)

17世紀バロック美術の躍動と魅力を解き明かす本書。カラヴァッジョを含む名匠たちの作品を通じて、古典主義との違いや都市の成長、建築との連動を分かりやすく紹介。カラー図版で視覚的な理解も深める。美術の歴史的、社会的背景を探求する一冊。

ラザロの迷宮(神永学)

神永学のデビュー20周年記念作『ラザロの迷宮』は、謎解きイベントで実際の殺人事件に遭遇する作家と、記憶喪失の男の事件を追う刑事の物語を描く本格ミステリー。読む前後で変わるカバーの仕掛けも魅力の一つ。舞台裏を隠し持つデザインは、物語とともに楽…

をんごく(北沢陶)

第43回横溝正史ミステリ&ホラー大賞三冠に輝いた『をんごく』を紹介。大正時代の大阪を舞台に亡き妻と再会を望む画家の物語。死者と生者の悲痛な交流と深い欲望が生む呪いを描く。ミステリと人間ドラマが融合した胸が痛むエンターテイメント作品。

温泉旅行の近現代(高柳友彦)

日本の温泉旅行はいつから始まったのか。江戸時代から現代に至るまでの温泉の歴史と変遷、そして利用者がどのように温泉を楽しんできたのかを解き明かす一冊。高度成長期の影響や露天風呂の普及など、温泉旅行の知られざる進化に迫る。