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スポーツを通して感じる超自然的な何か『神様は返事を書かない』(阿部珠樹)

神様は返事を書かない(阿部珠樹)

全600ページ以上にわたる、スポーツ・ノンフィクションだ。読者をあっという間にその世界へと引き込む表現力の豊かさと、取材に基づく丁寧なストーリーは、対策であるにもかかわらず一気読みしてしまう。生々しい体感とリズミックな文体が、緊張感を持って読む者を物語の中へと誘う。登場する人物の繊細な内面の動きも、読者に追体験させてくれる一冊だ。

テッド・ウィリアムス、金田正一、イチロー、長崎宏子、北の湖、三沢光晴など、偉大な成果を残した多くのアスリートや力士、格闘家についてはもちろん、競馬での人と馬の関わりなどが取り上げられている。最終章にある野茂英雄との長いインタビューは、特に読む者に考えさせる所が多い。

エピローグで著者は、これまでの取材活動を振り返りこう述べる。「ごく稀に、『ここには人間以外の何かがいる』と感じられる試合に出くわすことがある」。そして、スポーツを見て人が感動するのは、人の根源的な部分と、そういったものとは切り離された「超自然的」な何かを感じるときだと著者は述べる。


書籍名:神様は返事を書かない
著者名:阿部珠樹
出版社:文藝春秋