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記録の少ない平安時代前期、「源氏物語」の下地になる歴史的知識をさらっと学べる一冊『謎の平安前期』(榎村寛之)

謎の平安前期(榎村寛之)

日本の古代史について考えると、奈良時代の様子は正倉院文書という豊富な史料のおかげで詳細に理解することができる。これらの文書は、奈良時代の政治、経済、文化に関する貴重な情報を多く含むため、歴史学者や研究者にとって非常に価値が高いとされている。

一方で、平安時代、特にその前半期には、奈良時代のような充実した記録が残されておらず、その時代の生活や文化についての情報が乏しいため、不明な点が多く存在しているという。

例えば、奈良時代の女性の服装は、高松塚古墳に描かれた壁画から中国風の衣装であったことが伺える。しかし、平安時代にはいつの間にか、日本独自の十二単という華やかな女房装束に変化している。その変遷の経緯や理由について、はっきりとした記録がなく、歴史の謎の一つとなっている。

『謎の平安前期』は、こうした平安前期の疑問に迫っている。三重県立斎宮歴史博物館の学芸員である著者の知識や解釈が、本書には凝縮されている。あまり歴史系の書籍になじみのない読者にとっても、新書らくし理解しやすい内容となっている。


書籍名:謎の平安前期
著者名:榎村寛之
出版社:中央公論新社(中公新書)