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ドイツサッカー文化論(須田芳正/福岡正高/杉崎達哉/福士徳文)

ドイツのサッカーが如何に国民に根付いているか、その歴史的背景から現代におけるスポーツの地位までを、複数の著者による幅広い視点で読み解くことができる内容が特徴だ。
 
文中ではドイツの精神的な土壌ともいえるサッカーへの情熱を掘り下げている。競技者もファンもがむしゃらな勝利への追求は、まるで遺伝子レベルで刻まれたかのようで、それが子供の頃からの教育にも表れている。また、これらの触れ合いはメディアや街並みにも色濃く反映され、一般的な日常生活においてもサッカーは切っても切れない関係にあることが強調されている。
 
さらに詳細には、ビールを片手に観戦する光景が文化的な側面から考察され、親子でスタジアムを訪れる風習や、訓練されたゴールキーパーがどのようにして輩出されているのかといった具体的な事例が紹介される。現地での取材に基づいた生の声が多く含まれており、それによって得られた情報が豊富な挿話として交えられている。国民各層に対するインタビューも多岐に渡り、特に日本代表として国際的な舞台で活躍した武藤嘉紀選手の経験談は、読者に新たな発見を与えるに違いない。

こうした多角的な視野を通じて、ドイツのサッカーに対する愛情の深さとその独自性が読み取れる。サッカーが単なるスポーツで終わらず、そこには一国のアイデンティティ、歴史、そして文化が息づいているのだ。この書評は、これらの要素を踏まえた上で、興味をもって一読する価値があると確信する。


書籍名:ドイツサッカー文化論
著者名:須田芳正福岡正高杉崎達哉福士徳文
出版社:東洋館出版社