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創造論者VS無神論者(岡本亮輔)

岡本亮輔『創造論者VS無神論者』が取り上げるのは、21世紀の始まりを迎えて一層鋭くなる宗教界と科学界の確執である。この本で特に焦点を当てられているのは、宗教陣営によって提唱されたインテリジェント・デザイン論である。この創造論は、何らかの高度な知性によって宇宙や生命が設計されたという主張であり、その筋道を受け入れようと公の教育現場への影響力を拡大しようと努めている。一方、科学陣営では、リチャード・ドーキンスを旗頭として、新たな論客が現れた。彼らは、明確な神の否定と信仰からの解放を一般大衆に強く訴えかけており、宗教の負の側面を鋭く非難しているのだ。

こうした長い期間、紆余曲折を経た宗教と科学の葛藤を、この作品は総合的に振り返っている。特に、進化生物学者のドーキンスが宗教的な行事とは距離を置きながらも、文化的なイベントとしてクリスマスを祝うというスタンスは注目に値する。これは、日本において宗教的深い信仰よりも、行事や習慣を楽しむ傾向がある日本人の宗教感と何らかの共通点を持っているように見受けられる。従来の信仰に固執せず、文化としての宗教的行事を受け入れるというこの独特な視点は、宗教と科学という二つの異なる領域が交差する地点で新しい洞察を提供するものだ。

 

書籍名:創造論者VS無神論者
著者名:岡本亮輔
出版社:講談社(講談社選書メチエ)