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生命科学と進化の歴史を塗り替えるノンフィクション的フィクション『ドードー鳥と孤独鳥』(川端裕人)

ドードー鳥と孤独鳥(川端裕人)

すでに絶滅した鳥を通して、人間と自然、そして宇宙についての深い洞察を試みた挑戦的な作品だ。

主人公である望月環は、新聞社の科学部で勤務する記者。終わりを迎えた種に対してだけでなく、絶滅の縁に立つ生物全般に深い関心を抱いている。これは、絶滅生物に対する研究を遺した父親や、幼なじみである佐川景那の存在が影響している。主人公は、自らもドードー鳥や孤独鳥に関する調査を独力で進めていく。

物語は、環の調査活動や取材の過程、そして佐川景那との関係が複雑に絡み合いながら進行する。ドードー鳥や孤独鳥にまつわる情報は、図版を含む研究成果として作品に織り込まれており、これらの生物が持つ奥深い魅力に読者を引き込んでいく。

著者の川端裕人は、過去に『ドードーをめぐる堂々めぐり』という労作を発表している。そのため、小説に描かれる情報は緻密かつ豊富で、ドードー鳥関連の新しい発見を含む、多くの知識が盛り込まれている。

情報のすべてが単なるデータにとどまらず、物語の主要なテーマである自己探求という側面と共鳴し、生物と人間、そして存在の孤独について深く考えさせる。過去から現代に至るまでのさまざまな災害体験も物語に取り入れられており、リアリティを増している。


書籍名:ドードー鳥と孤独鳥
著者名:川端裕人
出版社:国書刊行会