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バブル経済事件の深層(奥山俊宏/村山治)

『バブル経済事件の深層』は、平成時代のバブル経済とその崩壊を緻密に分析した一冊である。この書籍では、経済の盛衰を巡る数々の事件をレポートし、社会に長く残る影響を探求している。著者の奥山俊宏氏と村山治氏は、バブル時代の経済ジャーナリズムの第一線で活動した経験を持つ二人で、バブル崩壊における幾つかの顕著な事件を深掘りし、その背景にある人々の行動や心理、そして社会構造を明らかにしている。

豊富な情報と実際にフィールドで収集した資料に基づいた本書は、わずかな新書サイズにも関わらず、ページ数は300を超えるほどのボリュームに仕上がっている。本書を手に取ると、読み進める中で、バブルの頂点にいた当事者たちの実情に思わず引き込まれてしまう喜劇と悲劇が交錯する世界へと、読者が導かれることになるかもしれない。

バブル経済の崩壊の余波は、長銀や日債銀といった象徴的な金融機関の倒産という形で表面化した。経済の神話が脆く崩れ去っていく中で、政府や金融権力との間の緊張関係が明らかになり、かつては一枚岩で動いていたと見られた金融界が、大きな変革の波に晒される起点となったのである。その後の日本金融界の変遷は、本書が示唆する通り、時代遅れの金融体系と行政のもつれた関係からの脱却を図る過程として描かれる。

例えば、バブルの堕落したサガを描くエピソードでは、大阪のある料理店の女将が巨額の融資を受ける状況や、大和銀行ニューヨーク支店のトレーダーが隠した巨額の損失、そしてEIEグループへと流れた膨大な資金といった、想像を絶する金銭の動きが明らかにされている。これらの事例を通じて、本書は、経済の大事件がどのようにして可能になったのか、そしてそれらが現代社会にどのような影響を与え続けているのかを描出しようとしている。タイトルの示す「深層」への探求は、ただ事実を列挙するだけではなく、当時を生きた人々の証言や記録を交えながら事件の全貌を浮かび上がらせていく。その試行錯誤ともいえる深い取材と分析により、バブル時代の幻影と結末の真実に迫る試みは、現代を生きる我々にとっても見逃せない示唆を多く含んでおり、経済学に限らず、社会学や心理学の視点からも一読の価値がある1冊と言えるだろう。


書籍名:バブル経済事件の深層
著者名:奥山俊宏村山治
出版社:岩波書店(岩波新書)