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細部から読みとく西洋美術(スージー・ホッジ/中山ゆかり訳)

美術史の大きな流れを形作る、中世から現代に至るまでの西洋の名作100点を精選し、各作品が秘める細かなディテールへの深い洞察を提供するのが『細部から読みとく西洋美術』。読者は、絵の中のほんの一部分に隠されたユニークな物語や、それが描かれた時代の社会的意味合い、または芸術家たちの緻密な技術への理解を深めることができる。作者スージー・ホッジは、中山ゆかりの翻訳によって、我々にこれらの作品を新たな視角から鑑賞する術を教えてくれる。

美術作品を全体として眺めるのは言うまでもなく重要であるが、それだけでは鑑賞のすべてを捉えることは困難である。画面にほんの一部に焦点を当てることで、隠れた意味や教訓、技巧が浮き彫りにされる。『細部から読みとく西洋美術』はその視点を促進し、緻密なディテールの重要性を675の拡大図版をもって示している。たとえば画家による色彩の選択、光と影の扱い、物語や伝説への微細な言及、そして画風の独自性などが詳細に解説されている。

本書では、サンドロ・ボッティチェリが表現した「春」の神秘、ディエゴ・ベラスケスの描く王宮の複雑性を示す「ラス・メニーナス」、ピカソの戦争の悲惨さを体現する「ゲルニカ」、そしてアンディ・ウォーホルがポップアートのアイコンであるマリリン・モンローに捧げた「マリリンの二連画」など、世界的な名声を誇る作品群の様々な層へと私たちを誘う。たとえよく知られた作品であっても、これらの作品には見過ごされがちな要素がまだ数多く存在し、それを探究する過程は豊かな発見と驚きに溢れている。

『細部から読みとく西洋美術』は、単なる美術鑑賞を超え、それぞれの作品が生まれた瞬間の文脈とその時代の文化的背景を理解し、そこから視覚芸術が持つ言葉を読み解く手がかりを与える一冊である。美術に対する好奇心をもった読者に対して、まだ明かされていないストーリーを解き明かし、親密で深い理解をもたらすことを使命としている。


書籍名:細部から読みとく西洋美術
著者名:スージー・ホッジ(中山ゆかり訳)
出版社:フィルムアート社