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「助けて」が言えない 子ども編(松本俊彦)

不慮の事態に直面した児童が救援を求める声を上げることができない現実に着目し、その背景にある問題について考察した一冊が、松本俊彦による『「助けて」が言えない 子ども編』である。平成30年に国から発信された「SOSの出し方教精神医学や社会福祉の視点から、子供たちが発する様々な危機信号をどう捉え、理解し、そして支援していくべきかを体系的に解説している。

本書では、自殺の予防策として、自傷行為や市販薬の過剰摂取などの行動が発するSOSのサインを見逃さないよう、それを適切に捉える視点が重要であると論じる。このような行動は単なる問題行動として片付けられがちであるが、それらは対応を必要とする重要な信号であることを、本書は強調している。その中で、不登校や家出、さらにはゲーム依存といった問題行動も、子供なりのSOSの一形態として捉えるべきであり、それに気付き支援する大人の在り方を提示している。

また、単に子供自身に「相談先はここだ」という情報を提供するだけでなく、子供たちが実際に支援を求めやすい環境や、大人による適切な受け止め方についても指摘しており、子供が抱える問題を社会全体で共有し、対処していく必要性を説いている。当事者である子供や彼らを支援する立場にある人たちに向けた内容となっているが、それだけでなく社会全体が問題認識を共有し、一層の対策を講じるべきだと訴えかける。

本書の書評・感想においては、専門家たちの共著ということで、豊富な事例と実践的なアプローチが盛り込まれており、子供の悲痛なメッセージを受け止めるために私たち大人が何をなすべきか、切実なメッセージが込められている。これらの問題に目を向け、大人が持つべき責任感について考えさせられる内容であり、多くの人々に読んでもらいたい一冊である。


書籍名:「助けて」が言えない 子ども編
著者名:松本俊彦
出版社:日本評論社