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昭和史百冊(平山周吉)

戦争の原因を探求する試みとして、平山周吉の手による『昭和史百冊』は、読み手に昭和期の歴史に対する新たな理解と洞察を与える。江藤淳の評伝をはじめ、多くの著作で高い評価を受けてきた平山が、これまでの歴史観に基づいた選書を通して、昭和史に光を当てる。400冊を超える膨大な文献の中から独自の視点で選び出した本たちは、読者をタイムトラベルさせるかのように邂逅させる力を持っている。

本書は、第二次世界大戦での「敗北」という結果を乗り越えられずに、持続する「歴史問題」に直面した日本が、依然として「戦後」を迎えていないと指摘する。言い換えれば、「昭和史は終わっていない」と平山は述べ、なぜ日本がそういった無謀な戦争の道を歩み始めたのかに焦点を当てる。検証の中心にあるのは、昭和時代の象徴である天皇と陸軍の役割である。

本書において、平山は「日本の開戦理由」「軍事と民間の結びつき」「天皇の存在とされるタブー」など、具体的で論理的な章構成を用いて、読者を昭和史という多角的な「知の森」へと誘う。対象となる資料は、史書や評伝にとどまらず、日記や回顧録に至るまで広範にわたる。さらに、太宰治や川端康成、そして三島由紀夫といった文学者や、小津安二郎といった映画監督の作品を通じて、昭和時代の精神史にも踏み込む姿勢を見せる。

著者の選出した文献からの繊細な引用は、平山の内面にある感情を表している。「敗戦国となった日本の真の崩壊は、戦争を引き起こしたことでも、敗北したことでもなく、過ちを否定し新しい時代の到来を信じたことにある」と、福田恆存の言葉が引用される。

読者は、この豊富で洗練された書籍ガイドを通して、昭和史の新たな理解を深める応答とするだろう。評者の経験によれば、医師でもある詩人丸山豊の『月白の道 戦争散文集』に強く惹かれ、その感動を共有する経験をした。

本書は、最近亡くなった半藤一利の『昭和史1926―1945』で幕を開ける一方で、彼の遺作『戦争というもの』の紹介で締めくくられる。昭和史の伝道師としての彼への敬慕がひしひしと伝わる。半藤が最期に妻へ残した「日本人はそんなに悪くない」という言葉で締められるこの書籍は、その意味を深堀りしたい誘いをかけている。


書籍名:昭和史百冊
著者名:平山周吉
出版社:草思社