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特攻服少女と1825日(比嘉健二)

日本の平成時代に入り、経済がバブルに沸く熱狂を見せた背景の中で、各地に特攻服に身を固めた不良少女集団「レディース」が現れる。彼女たちは、改造された車やバイクに身を任せ、街中でその存在感を発揮し、頻繁に喧嘩に明け暮れる毎日を送っていた。そのような彼女たちの生き様を詳述し、かつて非常に人気を博した雑誌『ティーンズロード』に焦点を当てた一冊が、元編集長である比嘉健二氏により執筆された『特攻服少女と1825日』である。本作は、レディースたちの実話に基づいたドキュメンタリーであり、少女たちの生々しい言葉を借りて当時の彼女らの胸中や真の姿を浮き彫りにする。

教育の現場に居場所を見つけられず、学校を出奔するような生活を送っていたこのレディースたちにとって、少女たちの悩みや価値観を肯定的に取り扱った『ティーンズロード』は、自己実現の場として重要な役割を果たしていた。また、当時の具体的な人間ドラマと彼女らの強烈な個性が引き起こした出来事が綿密に綴られており、その一つ一つのエピソードは人間の多様性や人生の複雑さを感じさせるものだった。例えば、少年院へ送られた挙句、破門された「すえこ」や100名以上のメンバーをまとめ上げるリーダーシップを持つ「のぶこ」、さらには歌手のユーミンと共演する機会を得た「かおり」といった彼女たちの体験談からは、彼女らの人間味のある一面が垣間見られる。

自らも出版業界への進出を夢見ながらも波瀾に満ちた若き日々を過ごした著者は、自身の経験を踏まえながら、レディースという――当時の社会から見れば「逸脱者」集団とされた存在――に理解と共感を示している。比嘉氏が編集長を務めていた『ティーンズロード』は徐々にその発行部数を伸ばし、特集された総長たちやチームは次第に著名となっていくが、やがてそのブームも過ぎ去り、結果として雑誌は1998年(平成10年)にその歴史に幕を閉じる。しかし、比嘉氏はその後も元総長たちとの再会を果たし、彼女らの「変化」に深い敬意を表している。

社会からの騒音や荒れ狂ったレディースたちの姿が消滅し、不良少女が「絶滅危惧種」とされている現代では、少年法違反者や不登校児童・生徒の増加が問題視されている。また、過去に熱狂的な人気を誇った表現の場がない中で、今後の「救い」となるものが何なのか、さまざまな疑問を投げかけている。結局、この本が指し示しているのは、息苦しいとされる現代の日本社会においても、居場所の確保というテーマの普遍的な重要性である。


書籍名:特攻服少女と1825日
著者名:比嘉健二
出版社:小学館