YOMEBA

読書のおともに

※ 当ブログはAmazonアソシエイトを利用しています

清代北京の首都社会(堀地明)

清代北京の首都社会(堀地明)

清朝時代の北京が直面した食糧供給の課題や、火災対策、そして治安の確保の仕組みについて深く掘り下げた研究書である。北京という首都の生命線である食料はどのようにして調達されたのか、また市民を盗賊や火事といった災害からどのように守り抜いたのかが紹介されている。さらに、1853年の太平天国軍による北伐や、1860年の英仏連合軍による北京侵攻という時代の試練に、都市がどう対処したのかを明らかにしている。

北京や台北に保存されている貴重な行政文書からの分析を通じて、詳細な情報が収められている。また、本書の研究範囲は広く、乾隆帝の18世紀から1900年に発生した義和団事件に至る時期もカバーされている。

例えば、婚礼を祝う際に使われる爆竹から引き起こされた火災で官僚の住居が焼け落ちた出来事や、ドイツ兵が店舗火災の際に消火活動に積極的に協力した記録などが挙げられる。その他にも、不穏分子を見張るための施設とその構造を視覚的に理解できる図版やイラストも含まれており、当時の首都での日常や人々の暮らしが描き出されている。


書籍名:清代北京の首都社会
著者名:堀地明
出版社:九州大学出版会