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世界の移民歴史図鑑(フィリップ・パーカー)

世界の移民歴史図鑑(フィリップ・パーカー)

ホモ・サピエンスがアフリカの地を離れてから、延々とその生活領域は広がり続けた。その理由は多岐にわたる。気候変動による食料不足といった自然環境の変化、政治的な変化、貿易の発展、迫害や差別避けるためといった社会的要因。そして今では、地球上ほぼすべての地に人の足跡が広がったのである。
 
『世界の移民歴史図鑑』はこのような人類の移動の歴史を、初期段階から現代に至るまで詳細に描き出している。植民地時代から独立に至るまでのプロセス、大量移住の背景にある自由への渇望、そして多様な文化が拡散する過程を、チャプターごとに整理している。豊富な図版や写真を交え、移民という現象へ理解を深めてれる。

特にユーラシア大陸の移住の歴史に重点を置き、日本や東洋も含めた民族的な動きも掘り下げている。これにより、人間の歴史がどのように移動に影響を受け、形作られてきたかを明確に捉えられる。移動し続ける人々の物語を通じて、過去の景色が生き生きと伝わってくる。また、移民の経路を図版入りで解説しているので、どこでどのように人々が動いてきたのかを、俯瞰で見ることができる。

現在、世界は新たな移民の波に直面しており、状況は日々深刻さを増している。『世界の移民歴史図鑑』は、読者に現実を突きつけるとともに、その先を見据えた一冊である。


書籍名:世界の移民歴史図鑑
著者名:フィリップ・パーカー(本村凌二監修/小林朋則訳)
出版社:原書房