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朝鮮半島の歴史(新城道彦)

日本においては、歴史的にも地理的にも近い存在である韓国や朝鮮に対する関心は、一部の例外を除き、比較的限られたものであったことが認識されている。これは特に、中国と並べて考えると顕著で、中国の場合、日本文化の源泉としての位置づけや、古典文学を介しての教養・親近感が培われてきた歴史があったからだ。

ただし朝鮮に関しては、これとは大きく異なる状況がある。さまざまな地名が渡来人の存在を示唆しているとはいえ、中国文化に比肩するような文化的な交流や影響は大きくはなかった。また、西洋文化に対して日本人が抱くような、絵画や文学作品による共感や憧れのようなものも、あまり見られなかったのが現実である。

しかし、21世紀に入ってからの状況は異なる。韓流ドラマが注目されるようになり、日本国内においても非常に強い関心が寄せられるようになった。その人気は、これまでの隣国への関心のあり方を変え、多くの視聴者に新たな朝鮮への関心を抱かせた。このブームは、娯楽作品を通じて朝鮮王朝の華やかなイメージを持つようになる人々を生み、日本によってそのような豊かな文化が破壊されたと捉える複雑な感情を抱かせることとなった。

『朝鮮半島の歴史』は、そのような時代にあって、朝鮮王朝の建国から600年にわたる激動の歴史をクローズアップするものである。この本は、朝鮮が東アジアの強国間の緩衝地帯としての地政学的な役割を果たしてきたこと、さらには内政の腐敗と弱体化に陥った事実も描き出している。特に外戚による勢道政治が身分制を無視した権力争いを引き起こし、19世紀には破綻寸前の状態にあったことも詳細に解説している。

朝鮮半島が本当の意味での「独立」を維持した時期は極めて短く、多難な歴史に幾度も見舞われている。にもかかわらず、新城氏は、隣国の歴史を直視することから目を背けず、その複雑な歴史に対しても尊敬の念を表している。そのような姿勢が、韓流ドラマを愛する人々だけではなく、隣国の歴史について学びたいと考えるすべての人々にとって、理解の手掛かりを与えるだろう。『朝鮮半島の歴史』は、そんな隣国への関心を深め、その理解を助ける1冊として、多くの読者にとって価値ある入門書である。


書籍名:朝鮮半島の歴史
著者名:新城道彦
出版社:新潮社(新潮選書)