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頭じゃロシアはわからない(小林和男)

長年にわたるロシアとの深い関わりを背景に、102個のことわざを手がかりにして、その文化と人々の考え方を暗に分析している。

軍事行動に批判的な声が表面化しづらいロシア国内で、著者は独自の視点を通じて、庶民たちの本音を探ることに挑んでいる。ロシア人の知人がメールで送ったことわざは、表向きの支持率とは異なる、民心の深層を映し出しているのである。武力による抑圧と知的な議論の排除がなされる中で、ことわざという形で抵抗の意志が表れていることは注目に値する。

政権指導部に対しては、言葉では美しく聞こえるものの、その実行が不十分である点が指摘されている。メディアによる言論統制の厳しさとインターネットへのアクセス制限などから、ロシア市民の洞察力と抵抗の表現を偲ばせる。

著者は、ロシア人たちが現状にどのように対処し、どのように感じているかを探り、そこに庶民の健全な判断力が隠されていると考えている。たとえ政府に対して表れなくても、不満や反対意見は様々な形で存在すると暗に読み取ることができる。

また、悪とされる組織や集団、個人が互いに擁護し合う現象についても考察されている。そうした行いが、社会構造の一部として機能している面を強調し、ロシア全体がまるで一つの大きなコミュニティのように振る舞っている比喩は印象的である。

さらに、日本との関係性や今後の国際協力においても、この著作がその理解を深める一助となるであろうと小林和男氏は述べている。国と国との間のトラブルが一段落した際に、再び良好な関係を築くための基礎知識として機能することを期待している。

このように、102のことわざを通して見えてくるロシア人の深い心理や文化的背景を紐解き、複雑な政治状況下での人々の真実を読み解こうとする本著は、現代の国際関係を理解する上で重要な指標を与えるものである。


書籍名:頭じゃロシアはわからない
著者名:小林和男
出版社:大修館書店