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お帰りやす、天皇陛下。(井上章一/工藤美代子)

『お帰りやす、天皇陛下。』は、京都の深い歴史と皇室との関わりを掘り下げた一冊。国際日本文化研究センターの井上章一所長と皇室に精通する作家工藤美代子氏の対談形式で綴られている。この作品は、井上所長の『京都ぎらい』の成功に続く鑑賞作であり、読者に京都と皇室の1000年にわたる関係性を示すことを目的としている。

中心となる考察は、歴史的背景と文化的影響を駆使して「京の都」がどう形成されてきたか、そしてその過程で皇室がいかに関与してきたかという点に焦点が当てられる。井上氏の深い洞察によれば、戦国時代以前における皇室の権威は、美しい女性との関係性ー具体的には、朝廷の女房を介した美人力ーにその起源を持つ部分があったと指摘される。この視点は、通常の歴史解説にはあまり触れられない領域であり、読者に新たな発見を提供するものである。

また、工藤氏は皇室の文化継承に強い期待を込め、天皇皇后両陛下に対しては、古都京都での居住を通じて、日本の長い歴史を身近に感じながら、民のための祈りを捧げる存在であって欲しいとの願いを表明している。工藤氏の思いは、皇室が国民にとって身近かつ神聖な存在であるべきであるという信念に基づいている。

この書評・感想を通じて、著者たちが豊かな議論を交えながら、皇室と京都との千年を超える絆の意義を読者に問いかけている。京都がなぜ特別なのか、それが今日の日本にどのように関わっているのかについて、歴史と文化の観点から丁寧に分析された内容である。その結果、単なる歴史書の枠を超えた、日本のアイデンティティを再確認する助けとなる書籍として位置づけられるだろう。


書籍名:お帰りやす・天皇陛下。
著者名:井上章一工藤美代子
出版社:ビジネス社